大川慶次郎の有馬記念

大川慶次郎さんならブエナ本命/有馬記念
有馬ウイークに競馬の神様が降臨! 12月21日が命日の大川慶次郎さんは没後10年になる。亡くなるそのときまで競馬を愛し、「遺言予想で有馬的中」「全レース的中」など数々の伝説を残した。もし生きていたならば、今年の有馬記念(G1、芝2500メートル、27日=中山競馬場)をどう予想するのか。たとえ牝馬でも狙いを下げなかったスタンスや身内の証言から、◎は3歳牝馬ブエナビスタだ。
神様の本命を当てろ。デスクから特命を受けた記者は資料室に走り、過去の記事をあさった。大川さんは99年12月15日、茨城県美浦トレーニングセンターで取材を終えた夕刻、近くのすし店で突然倒れた。亡くなったのは21日。この年の有馬記念はその5日後に行われた。レース前日の本紙1面に最後の予想が載った。いわば遺言だ。
レース部長は、倒れる2日前、有馬記念の予想の一部を聞いていた。「勝つのはグラスワンダーですよ」。(99年12月25日付)
グラスワンダーは前年の有馬、春の宝塚記念を制していたが、秋のG1を連覇したスペシャルウィークの勢いが上とみる人が多かった。しかし、大川さんは右回りでは皇帝シンボリルドルフ級と評価し、有馬記念の本命に決めていた。旅立ち予想はグラスからスペシャルを含む4頭ボックス。そう紙面では結論づけていた。記者はレース翌日の紙面を追った。
グラスワンダーが、わずか4センチの差で歴史的名勝負を制した。ライバルのスペシャルウィーク怒とうの追い込みを前年覇者の意地でしのぎ切った。「4センチ」は生前、「グラスが勝ちます」とその勝利を予想していた故大川慶次郎さん(享年70)の天国からの後押しだったのか。(99年12月27日付)
「完ぺきな予想だ」。記者はため息をもらした。
今年はグラス産駒セイウンワンダースペシャル産駒ブエナビスタリーチザクラウンが出走予定。思い入れは強いのではないか。ここは長女の智絵さんに話を聞かねばなるまい。
智恵さん あくまで推測だけど、父はブエナビスタに◎を打っている可能性が高い。相手はちょっとわからないけどね。ここ数年はウオッカのように男勝りの牝馬が出てきた。でも、当時から牝馬を本命にすることにためらいはなかったわね。
94年有馬記念直前の予想に次のような記述がある。3冠馬ナリタブライアンが制した年である。
私は現時点でヒシアマゾンに○をつける予定でいます。私は牝馬というだけで弱いと決めつけるのはどうか、という考えを持っています。過去にはガーネツト、スターロツチといった名馬もいたし、牡馬に対して重量2キロ減という有利さもある。アマゾンは2キロ減があれば、(ブライアンに対して)互角とみていいと思います。いつも小差で勝つので、レースのたびに「今度は負けるだろう」と思われがちです。いわばシンザン型。私がシンザンを1度も◎にしなくて煮え湯をのまされた経験を、今の若い人たちがするのではないかと心配しています。(94年12月20日付)
今年参戦するブエナビスタも大きな差をつけて勝つタイプではない。シンザン=(イコール)ヒシアマゾンブエナビスタの図式。間違いなく馬券の軸の1頭にブエナビスタがいる。記者は確信した。智絵さんによると、大川さんは1着と2着と着順通りに当てる「馬単主義」。1日すべてのレースを当てるパーフェクト予想を4回達成しているが、たとえ馬券が当たっても、予想した着順通りでないと不満顔だったという。となれば、ブエナ1着固定の馬単3連単で勝負するのがスジ。記者は参戦する1頭1頭を大川さんの過去の記述と照らし合わせ、検討。相手は7頭に絞られた。09年版大川慶次郎有馬記念予想が完成した。あとは、パドック解説でよく使っていたフレーズ「バカによく見える馬」を、当日に買い足せば的中馬券をゲットできるはずだ。どうですか、天国にいる大川慶次郎さん。

http://www.nikkansports.com/race/news/p-rc-tp0-20091221-578021.html