ユキチャン、オークスへ?

純白のヒロインが、世界的な快挙にチャレンジする。ユキチャンは、極めて珍しい白毛馬。母譲りの美しい馬体だけでなく、3戦2勝の戦績も胸を張れる。重賞挑戦だけでもJRA初の快挙だが、勝てば世界的な話題になることは間違いない。オークス出走の夢を乗せて、真っ白な馬体が躍動する!

話題性だけではない。堂々たる連勝で実力を証明した白毛ユキチャンが、デビュー4戦目での重賞制覇に挑む。生まれること自体が珍しい白毛馬がJRA重賞を勝てば、もちろん史上初の快挙だ。「お母さんやお兄ちゃんと違って、成績を出したことで取材を受けるわけですからね。少し硬さのあった(母、兄の)2頭と違って、柔らかみが出てきましたよ」母シラユキヒメ、兄シロクンに続いて管理する後藤調教師も、笑顔の中に感慨深さがにじみ出ている。体質が弱く、満足に競馬を使えない中で取材を受け続けた母や兄と違い、今回は胸を張っての重賞挑戦。しかも、01年のオークスレディパステル(フローラSは2着)と同じミモザ賞の勝ち馬だけに、注目されて当然だ。
ここまで3戦は芝1200メートル〜ダ1200メートル〜芝2000メートルと歩んできた。後藤師も「どれだけ迷ってきたか、ということ」と認めるように、ユキチャンも最初から体質が強かったわけではなかった。それが体に柔らかさが出てレース内容も一変。「いずれ500万下は勝てる馬だと思っていましたが、この時期とは…」と、驚く早期の出世につながった。16日にポリトラックで5ハロン66秒4、38秒4−12秒5を馬なりでマークするなど、中間も順調そのもの。「けいこが足りない感じで使ってきた馬ですが、今回は時間がありすぎるほど」と十分に仕上がっている。勝ってオークス出走ともなれば、世界中の注目も集めるだろう。「毛色と無関係に夢を口にできるところまで来たのは確かです。(注目される)事実には従わないといけないし、この馬が頑張れば競馬界が盛り上がるでしょう。とにかく無事に競馬に持って行きたいと思います」と後藤師。
華やかに登場した真っ白なヒロインは、クロフネ×サンデーサイレンスと血統的にも超一流で、オーナーはディープインパクトと同じ金子真人氏だ。日本中を沸かせたあの勝負服を背にしたユキチャンが、新たな歴史を作り出す。
■日本の白毛
長らくその存在は認められていなかったが、79年にハクタイユー(父=黒鹿毛、母=栗毛)が突然変異的に誕生した。同馬は未勝利だったが、種牡馬入りして送り出した産駒ハクホウクンが97年に大井競馬で勝ち、日本の白毛馬初勝利をマーク。JRAではユキチャンの全兄ホワイトベッセル(栗・安田隆、牡4)が昨年4月1日にJRA初勝利を挙げた(現在6戦2勝)。国内ではこれまで16頭が白毛馬として馬名登録され、ユキチャンの母シラユキヒメ(父サンデーサイレンス、母ウェイブウインド)からはシロクン(父ブラックホーク)、ホワイトベッセルに次いでユキチャンが生まれ、今年も2月28日にユキチャンの全弟が白毛馬として誕生した。
■世界の白毛
記録上、最初に白毛馬として登録されたのは1896年生まれの米国馬ホワイトクロス(米国で目立った白毛の活躍馬はない)。欧州では現在の仏2000ギニーにあたるレースを制した1919年生まれのモンブランが有名だが、当時の理論上、「両親とも栗毛の場合、他の毛色は生まれない」とされ、栗毛馬として登録されていた。なお記録が古いため白毛であったかどうかも含め真相は不明のままだ。いずれにしても、白毛馬が重賞を勝てば世界的な快挙となる。
白毛馬誕生のメカニズム
ユキチャンのように、同じ母から4頭も白毛馬が出るケースもあるが、もともとは突然変異的に発生したものとされている。現在認められている白毛馬も始祖はすべて突然変異だった。ただし、遺伝形態は優性遺伝で、両親のどちらかから白毛の遺伝子を受け継げば、子供は白毛になる。
芦毛馬との違い
白い馬といえば芦毛馬のイメージがあるが、主な違いは2点ある。1つは芦毛は徐々に白くなっていくのに対して、白毛は生まれた時から真っ白であること。もう1つは白毛だけが肌の色がピンク色であること(芦毛馬の肌は、毛色が白くなった後も黒っぽい)。年齢を重ね真っ白になった芦毛馬を白毛馬と見分けるためには、肌の色を見れば分かるとされている。

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