好きなコラム

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■ 3 ■ 重賞ノスタルジア − ジャパンカップ
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第370回 「コツコツ→開花→大健闘」
最近は時間が無くて殆ど手つかずなのだが、以前は某競馬ゲームでよく遊んでいた。ゲームとは言っても血統配合がなかなか詳しくて、一度足を踏み入れるととことん奥深い、競走馬の血統の世界を垣間見ようと思って始めた次第である。なんと言ってもゲームだから、そこそこ楽しめなくてはユーザーが飽きてしまうので、実際の生産に比べればゲームのそれは遥かに簡単なのだろう。しかしやる以上は少しでも現実の厳しさを(?)と意気込んで、一番難易度の高いレベルでプレイしてみると、それなりに良血と言われる配合で生まれた競走馬が全く走らなかったりもする。それでもめげずにコツコツとプレイを続ける内には、最初はパッとしなかった馬が、突如実力を開花させる瞬間に遭遇する事がある。今までの足踏みが嘘のようにあれよあれよと勝ち進み、遂にはG1の舞台にまで立った時など、ゲームとはいえ涙腺が緩んだ事もある。自分で大切にした血統、考えに考えた血統の馬なら尚更だ。
先日、調教中の故障で突然この世を去ったチョウサン。
バーチャルゲームの競走馬と同じと言う訳ではないが、この馬もコツコツと真面目に競走生活を送り、ある時を機に花開いたと言う印象が私にとっては強い馬だ。デビュー3戦目で未勝利脱出後、続く山桜賞を連勝した後、掲示板に乗ったり外れたりしつつ、特別レースで2勝を挙げたチョウサンは、昨年の秋に毎日王冠を制して重賞ウィナーとなる。この時チョウサンの後塵を拝した馬の中にはダイワメジャーも居た事を思えば、関係者の喜びはいかばかりだっただろう。その勢いに乗ったまま、チョウサンは続いて天皇賞・秋に出走するが8着に敗れ、更にジャパンカップにも出走した。
ジャパンカップは国際レースでもあるから、出走馬の顔ぶれは誠に豊かだ。日本勢だけでもダービー馬2頭、宝塚記念馬、菊花賞馬、エリザベス女王杯馬、皐月賞馬とG1馬がズラリと顔を揃え、外国からも果敢に遠征してきた馬が4頭もいた。その同じ舞台に立つのだから、関係者の喜びは毎日王冠を制した時よりも遥かに大きかったに違いない。おまけにこの時のジャパンカップでは、レースを作ったのもチョウサンである。スタート直後から先頭に立って走り抜き、上がり3ハロンも34.8秒の末脚を使っている。しかし惜しいかな、勝ち馬を含めた上位5頭が、それを上回る末脚を発揮して差しを決めた為、チョウサンは6着に敗れた。とは言え、勝ち馬アドマイヤムーン宝塚記念馬、2着ポップロック有馬記念2着、目黒記念2連覇など、3着メイショウサムソン=前年のダービー&この年の春秋天皇賞馬、4着ウォッカ=この年のダービー馬、5着=デルタブルース=2004年の菊花賞馬に続く6着で、前走で8着に終わった天皇賞秋よりも2つも順位を上げたのだから、大健闘のレースを見せてくれたと言っていい。素晴らしいの一言に尽きる成績だったと思う。
そしてジャパンカップ後、チョウサンは重賞戦線で再びコツコツと真面目に走り続けていた。大健闘の反動が出たという訳でもないだろうが、掲示板を外しながらも一生懸命に走る姿はいつも目に止まり、私には勝敗抜きで応援せずにはいられない存在になっていた。
そんな中で届いた悲報は誠に悲しい。チョウサンを管理する清水調教師は、「元気なら来年も現役で頑張ってほしいと思っていた」と報道陣に語っていたが、私も同じように思っていた。最近は高齢馬でも活躍する機会が増えているから、また再び重賞を勝つ姿を見れるかもと期待していたのだ。
それだけに今年のジャパンカップの出馬表でも、チョウサンの名前を探してしまうかも知れない。そして重賞の出馬表を見る度に、やっぱりチョウサンの名前を探す癖は、当分抜けないだろうと思っている。

http://archive.mag2.com/0000000816/index.html