オークス回顧

終わってみれば桜花賞のワンツースリー。別路線組は勝負争いに入る余地がなかった。有力馬たちはそれぞれ完璧なレース運びで力を出し切った。それだけに、ある意味では一番ロスの多いレースをしたブエナビスタの強さが際立つ結果となった。
逃げ宣言をしていたヴィーヴァヴォドカの逃げ。デリキットピースがスタンド前で行きたがるところあったが、うまく単騎逃げに持ち込み1000m通過は61秒ちょうどの絶好のペース。特に4ハロン目からラスト3ハロン直前までの道中1200mが実に12秒5か12秒6のどちらかで、ずっと推移するという緩めの淀みないペース。見た目上、引き離しての逃げだったが後続の脚をなしくずし的に使わせる無謀な逃げではなく、自分もある程度脚をためつつ勝ちに行く冷静な逃げだった。数字以上にペースはゆったりしていたはず。1200mの前後半が、73秒5と72秒6。やはり、スタミナではなく差し脚比べの、上がりが問われるレースとなった。実際、上位は上がりの脚の順。
これはレッドディザイアにとっては好都合だっただろう。レッドディザイアに逆転の目があるとするならば、当然ブエナビスタよりも前でレースを展開し先に抜け出し最後まで押し切るレース。この馬自身も距離がどこまでこなせるかは未知数だったが、強気のレースを展開。中団の最内に待機して、脚を温存。直線で位置取りを上げてスパートを仕掛けるという理想的なレースができた。ためた脚を繰り出して11秒7から11秒1に直線で加速していく。四位騎手が「仕掛けが若干早かったか」と述べたように、最後は12秒台にペースを落としたが、例年であれば、これで押し切れたはずで乗り方は間違っていなかった。
しかし、ブエナビスタのスケールが違いすぎた。道中の折り合いも全く問題なく、唯一ヒヤッとしたのは直線に入っての進路選択の場面だけ。一端、馬群の外目、前にいたサクラローズマリーの内側を狙いに行ったものの、サクラがインへ刺さるように伸びるのを見るや否やすぐに大外へ転進。ここで一瞬でも躊躇をしていれば、届かなかったかもしれないが、外に出してからは桜花賞の再現。33秒台の脚を繰り出して、ゴール直前で差し切り二冠達成。おそらく、もっと前で競馬をしてもどこにいても、どこからスパートをかけてもこの馬は勝つだろう。
ディープインパクトに例える向きもあるが、ディープインパクトは自分で動いてレースを破壊するタイプ。この馬は、最後の絶対的末脚を武器に、最後の最後で帳尻を合わせるタイプ。レースの勝ちタイムを知っていてラスト600mで使う脚を知っているような末脚。この馬も常識を外れた、選ばれた馬だろう。ダービーに出ていても面白かったはず。凱旋門賞(仏G1)挑戦プランがあるが、現状、日本馬が勝つ唯一のチャンスは、斤量で恵まれる3歳馬の挑戦。楽しみは大きい。
3着ジェルミナルは、桜花賞と同じく離されての3着。道中は、レッドディザイアよりも前。ただ、仕方がないところだが4角で外を回ったため位置取りを若干下げてしまった。直線ではこの馬も伸びてはいるが、1、2着馬とは差がついてしまった…。先述のように、上位馬は上がりの速さの順となった。同じく直線が長く、直線に入って急激にペースアップする阪神外回りとの関連性はやはり高い。昨年も然り、阪神外回りで好走している馬(多くは桜花賞上位馬)が、そのままオークスでも台頭する傾向がさらに強まっていくのではないだろうか。
4着ブロードストリートも、中団からよく伸びていたが桜花賞組には敵わなかった。この力の差は大きい。5着ディアジーナは血統背景からこなせると見ていたが、本質は中距離までの馬のようだ。先団に位置して直線でリードを守りきろうというレース運びは完璧。これでジワッとしか伸びないのだから完敗だろう…。東京で勝っているとはいえ、ここまで決め手鋭い馬が上位になってしまうレースだと分が悪い。ただ、決して実力がないわけではない。この馬の持つ能力が今回のレースで求められる能力と違っていただけだ。夏から秋にかけての牝馬重賞は、条件的に面白いと思うが…。6着デリキットピースは、まだ経験不足。先団からそれなりに粘ったのだから収穫はあったと思うが…。

http://archive.mag2.com/0000150903/index.html

表彰式後の勝利ジョッキーインタビューはこちら、私と同じA型の牡羊座アンカツジョッキーはどこまでいっても冷静で大胆です。