転身

ツルマルボーイ乗馬競技で年内デビューへ
04年の安田記念を制し、引退後種牡馬になったツルマルボーイ(せん11)が、現在種牡馬も引退し、乗馬競技での年内デビューを目指している。競走馬は引退後、乗馬か種牡馬になるのは通例だが、G1馬が種牡馬生活を経て競技馬に転身するのは珍しいケース。父馬母馬ともに橋口厩舎に所属し、ボーイを「私の孫のようなもの」と言う橋口弘次郎師(63)は、7月中旬に乗馬訓練中のボーイと再会。第3の「馬生」を送り始めたツルマルボーイにエールを送った。現役時代と比べると、少しふっくらした馬体。穏やかな顔つき。ツルマルボーイは今、北海道苫小牧市ノーザンホースパークにいる。「種牡馬生活を送っていたので、走るための筋肉が落ちていました。今はその筋肉が再びついたところです」と同パークの乗馬スタッフ粕谷英樹さん(24)はボーイの現状を語った。月曜から土曜までのほぼ毎日欠かさず、乗馬としての訓練を受けている。
橋口師:やっぱり競走馬のときよりも、おとなしいというか、落ち着いているね。現役時代はかなりやんちゃだったから。とにかく元気な馬で、厩舎でも結構暴れていたんだよ。
ダンスインザダーク、母ツルマルガール。00年7月の小倉でデビュー勝ちを飾った。ボーイにとっての最初の“人生”、競走馬として最高のスタートを切った。
橋口師:父、母とも橋口厩舎にいた馬。私がこの配合をお願いして誕生したのが、ツルマルボーイ。だから孫みたいなもの。新馬勝ちのときは立ち上がって拍手した。長い調教師生活でも立ち上がって拍手したのは、後にも先にもあのときくらいじゃないかな。
競走馬の才能が開花し始めたのは4歳からだ。3月の中京記念で初の重賞勝ち。その後金鯱賞も制し、宝塚記念は2着。だが、G1制覇を期待された5歳時は宝塚記念天皇賞(秋)2着はあったものの、勝てなかった。開花はしても満開まではいかない状態が続く。念願がかなったのは6歳の春、04年の安田記念。まさに「遅咲きの春」だった。
橋口師:あのときも本当にうれしかった。G1で2着というのもすごいことなんだけれどね。でもボーイには何としてもG1を勝ってほしかったから。
同年の有馬記念8着を最後に引退し、種牡馬生活に入った。第2の“人生”の種牡馬生活は05年から種付けを始め、4年間で85頭。1年目は57頭付けたが、徐々に頭数が減少。中央では今年7月までに計13頭の産駒(抹消馬含む)が在籍しているが、まだ勝ち星はない。昨年で種牡馬生活を引退することになった。
橋口師:もし、あのとき安田記念を勝ってなかったら、多分種牡馬にはなれなかったと思う。でも種牡馬としてはなかなか活躍できなかったね。種牡馬になってからもほぼ毎年会いに行ってたんだよ。
普通、種牡馬引退後は余生を過ごすことになる。だが、ボーイはまだ11歳と若く、元気だった。乗馬としての訓練を受けることになり、昨年ノーザンホースパークに入った。G1馬のプライドか「初めはツーンとして、エラそうなところがありました」と粕谷さんは苦笑する。馬術競技馬になれるかどうかは今後の訓練次第だが、粕谷さんは「競技馬になるなら、年内にはデビューをさせたい」と意気込んでいる。
橋口師:今回乗馬としてのボーイに会ったのは初めて。競技馬になるかもしれないの? なら、デビュー戦はぜひ見に行きたいね(笑い)。
競走馬としては遅い春だったツルマルボーイ、11歳。人間にして中年から老年に向かう年齢にして、新たな道を歩み始めている。

http://www.nikkansports.com/race/news/p-rc-tp0-20090728-524012.html

2004年の橋口厩舎の目標の1つが「ツルマルボーイにG1を勝たせること」、あとで知ってウルウル来たのを思い出します。

G1馬トウカイポイント競技馬で活躍中
競技馬としてデビューが近いツルマルボーイの“先輩”にはトウカイポイントがいる。同じノーザンホースパークで現役の競技馬として活躍中だ。トウカイポイントは02年のマイルCSを勝ったG1ホース。当時からせん馬だったため、種牡馬にはならずに引退後は乗馬に。現在13歳で、北海道地区の馬術競技の常連馬だ。乗馬競技だけではなく、ノーザンファームの練習馬としても活躍。粕谷さんは「若い子たちはトウカイポイントに乗れば、G1馬の背中というものが分かる。G1馬に乗って練習できるというのは、ものすごく貴重なこと」と語った。ノーザンホースパークは北海道苫小牧市美沢にある馬のテーマパーク。トウカイポイントツルマルボーイも一般公開されている。

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