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重賞ノスタルジア − 小倉記念
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第381回 「放牧明け」
ピカレスクコートと言う競走馬がいる。
この馬の名前を聞くと、ディープインパクトを思い出す人も多いだろう。ピカレスクコートは2006年のディープインパクトが、凱旋門賞に出走するべく渡仏した際、帯同馬として共に仏国へ渡った馬である。
全姉に阪神JFを制したヤマカツスズランがいる良血馬で、全姉同様に期待をかけられてのデビューを果たしたが、元々喉鳴りが持病だけに花開く迄に時間がかかった。しかしディープインパクトと共に渡った仏国で、ダニエル・ウィルデンシュタイン賞(仏G2)を2着するなど、徐々に開花の兆しを見せ始め、2007年には自身の初の重賞タイトルであるダービー卿チャレンジトロフィーを制する事を得た。
いよいよ本格化するかと期待が一層大きくなった矢先、ピカレスクコートは二桁着順が続き低迷する事になる。
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第44回 農林水産省賞典 小倉記念(G3)
2008年8月3日(土) / 2回小倉6日10R / 2000m 芝・右/ 晴・良
サラ系3歳以上 / (混合) / (特指) / オープン / ハンデ
着 枠 馬 馬名 性齢 斤 騎手 着差 人気 単勝 体重 厩舎
1[2]3 ドリームジャーニー牡5 57 池 添 1:57.9 2 4.2 422+ 8 池江寿
2[6]10 ダイシングロウ  牡4 56 川 田 3 1 3.0 502- 6 松田博
3[5]9 ケンブリッジレーザ牡5 52 安藤光 1   3 50.3 504- 2 大根田
4[4]7 ヴィータローザ  牡8 56 小 牧 2   8 19.0 474+ 8 橋 口
5[8]14 ミヤビランベリ  牡5 55 岩 田 クビ 4 8.7 496+ 2 加藤敬
6[2]2 ニルヴァーナ   牡5 55 藤岡佑 クビ 14 14.7 490+ 8 池江郎
7[5]8 ダブルティンパニー牡6 53 鮫島克 アタマ 12 67.6 504+12 松田国
8[1]1 ワンモアチャッター牡4 55 鮫島良 1/2  10 44.3 456- 2 友 道
9[3]5 サンレイジャスパー牝6 55 佐藤哲 1.1/4 3 7.5 478-12 高橋成
10[7]12 ウイントリガー  牡3 49 浜 中 1/2   13 68.4 472+ 8 山 内
11[6]11 ピカレスクコート 牡6 54 赤 木 1/2   14 73.4 502+10 池江寿
12[3]4 ナリタプレリュード牡6 53 渡 辺 2    15 79.8 488- 4  沖
13[4]6 レインダンス   牝4 54 藤岡康 1.1/4 7 16.6 478- 6  宮
14[8]15 グロリアスウィーク牡5 54  幸 5 5  8.9 466 0 音 無
15[7]13 カネトシリベルテ 牡9 50 芹 沢 クビ  9 20.7 458 0 田中章
払戻金 単勝 3 420円
    複勝 3 180円 / 9 830円 / 10 150円
    枠連 2−6 630円
    馬連 3−10 830円 / 馬単 3−10 1590円
    3連複 3−9−10 16780円 / 3連単 3−10−9 65740円
    ワイド 3−9 3570円 / 3−10 360円 / 9−10 2490円
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ダービー卿チャレンジトロフィーを制した後の低迷ぶりは、持病の喉鳴りや渡仏した疲れが出ていたのかも知れない。ピカレスクコートはその性格がことの他温和だと言う点を買われてディープインパクトの帯同馬に選ばれたそうだが、環境の変化が影響しやすい競走馬の事だ、目に見えない疲労が心身に溜まっていた事は想像に難くない。そして2008年のマーチSで15着と不本意な成績に終わった後、一旦放牧に出される事になった。
その放牧を終えて戦線復帰となったのが、昨年の小倉記念である。競馬新聞でも特別に表記されるように、放牧明けと言うのは競走馬の結果を左右する大きな事象の1つである。例えば前走から次のレースまでに半年の期間が開いていたとしても、厩舎に留まったままで調整が続けられるのと、放牧でリフレッシュするのとでは、後者の方がレースに対して影響する事が大きいように思える。何しろ、競走馬の大多数に調教等のストレスからか胃腸疾患が見られると言う研究結果もある位だから、厩舎にいる分には他馬の緊張を感じとって気が休まらない事もあろうし、厩舎を離れての休養は競走馬にとって心底リフレッシュ出来るのだろう。それは結構な事だが反面、帰厩後も普段の感覚を取り戻すのが難しくなるのかも知れない。
小倉記念に出走したピカレスクコートも、放牧前の成績低迷、放牧・休養明けという状態をを受けてか、人気は14番人気と低かった。出走馬の中にはG1馬のドリームジャーニー、重賞ウィナーのヴィータローザミヤビランベリサンレイジャスパーワンモアチャッター等が顔を揃えている事を思えば無理からぬ事ではある。
しかし先に述べたように、ピカレスクコート自身も仏国のG2戦で2着となったり、国内のG3戦を制した素質馬だ。おまけに仏国で共に切磋琢磨したのがあのディープインパクトとあって、何とかここで復活を願うファンも多かったに違いない。
だが復活は叶わなかった。ミヤビランベリが前走で逃げ切った七夕賞と同様に先頭に立ってレースを引っ張るのに対し、馬群中団に位置していたピカレスクコートは、3コーナー手前でダイシングロウやドリームジャーニーらが一気にペースをあげていくのに対し、逆に後退してしまう。
ただ、1コーナー過ぎから3コーナー手前まで、ピカレスクコートはもっとも馬群の混み合う場所に位置取っており、ほんの一瞬だが鞍上を務めた赤木騎手が接触を避けようとするような手綱さばきを見せる事、直線に向く間際でようやく大外の広い場所に出るや脚が伸びている事等を思えば、11着とは言え悲観する結果とは思えぬ感があった。
その証拠に、小倉記念に続き出走した小倉日経オープンでは2着という好走を見せた。小倉記念で体が絞れレース勘も取り戻したか、2番手でレースを進め、上がりの3ハロンも34.3秒を叩き出すと言った好調さを発揮した。
久々の好走となった小倉日経オープンの後、ピカレスクコートは再び放牧に出されているが、まだレースに復帰するとの知らせは入っていない。レース前に喉鳴りはだいぶ良いとのコメントを見たばかりだったが、その後球節炎を発症してしまったようだ。
脚部不安の中でも、球節炎は治癒までに殊更時間がかかる部類の病だと言う。既に前走から1年が経過しようとしている長期離脱ではあるが、再びその姿がターフに戻る日を待っているファンは多い。

http://archive.mag2.com/0000000816/index.html