矢野のためにも優勝しよう

矢野、最後のゲキ!虎よ「不可能はない」
今季限りで現役引退を表明している阪神矢野燿大捕手(41)がウエスタン今季最終戦となった中日戦(鳴尾浜)に出場後、逆転優勝を目指す1軍に、エールを送った。八回に代打で左前打を放ち、決勝点をおぜん立てすると、九回には下柳剛投手(42)とバッテリー。胴上げされた背番号「39」は最後のゲキを飛ばした。

目に涙の跡を残す矢野が、温かく、そして熱いゲキを虎戦士に届けた。猛虎を引っ張ってきた男が、魂を最後のグラウンドに刻んだ。
「全部勝てば自力優勝もあるんでしょ。可能性はあるんだから。不可能はないと思うし、みんならしいプレーで満員の甲子園を喜ばせてくれたら、うれしい」
2003、05年と2度のリーグ優勝に導いた男が、戦友たちにエールを送った。2−2の八回だ。一死一塁から代打で登場して、久本の3球目の直球を左前へ。三遊間を鋭いゴロで抜いて、続く岡崎の決勝適時打を呼んだ。九回は、捕手の守備位置へつき、同級生の下柳とバッテリーを組んだ。二死から四球と中前打で一、三塁のピンチを迎えたが、代打セサルを空振り三振。1点リードを守りきった。
「シモが僕のために投げてくれるということだった。2人の時間を楽しみたいのもあったけど、鳴尾浜のみんなの優勝もあるから、キャッチャーの本能を思いださせてもらった」。この日負ければ、優勝の可能性が消えていた。1年のほとんどを鳴尾浜で過ごした大ベテランの活躍でVの灯を消さなかった。
平田2軍監督と球団の計らいもあって、実現した引退試合。試合前には、金本も駆けつけ、約1時間、葛城らも交えて会話に花を咲かせた。試合後のセレモニーでは、花束を手渡した下柳と抱き合うと、目が潤んだ。
まず中日ナインに5度、そして若虎たちに5度、計10度胴上げされたた。試合後のミーティングでは、若虎たちの前に立った。「ここ(2軍)にいると、気持ちが折れそうになることもあるけど、俺も頑張るからみんなも頑張ろう」。ユニホームを脱いでも矢野は戦い続ける。もちろん奇跡の逆転Vを目指す1軍も同じだ。かつての正妻のゲキに呼応するようにナイターで1軍は広島に逆転勝ち。夢をつないだ。
「あっち(1軍)にも一緒に戦ってきた仲間がたくさんいるから」
矢野は仲間の力を信じている。

http://www.sanspo.com/baseball/news/100926/bsb1009260506014-n1.htm