次は1着でね

キングダムV武豊23年連続G1制覇/JC
ブエナビスタ降着で2位入線のローズキングダム(牡3、栗東・橋口)が1着に繰り上がり、朝日杯FS以来G1・2勝目を挙げた。日本の3歳馬の優勝は98年エルコンドルパサー、01年ジャングルポケットに続く史上3頭目武豊騎手(41)はデットーリに並ぶ3勝目で、デビュー2年目の88年から23年連続JRA・G1制覇となった。次走は12月26日中山の有馬記念(G1、芝2500メートル)に向かう。
異例の繰り上がり優勝に、最初は武豊も複雑な表情を見せた。「すっきりと勝ちたかったけど」。だが、ざわつきがやまないスタンドからの声援は温かかった。「ユタカおめでとう!」。確定が遅れて場内インタビューがなかったため、表彰式から引き揚げる時にはファンのために立ち止まり、手を上げて応えた。「負けても勝ったね」。検量室に戻るころには、笑顔が戻った。
表彰式の開始は日も落ちかけた午後4時1分。式の準備が整うまで、武はターフ上で待ちぼうけ。殊勲のローズキングダムは厩舎まで戻っており、いったんは口取り撮影中止の案も浮上。結局は順番を逆にして、先に表彰式を行ってから記念撮影。テレビインタビューもなく、表彰式の最中に最終レースの出走馬が入場する異例ずくめの中で、たたえられた。
不利を受けた以外、レースは完ぺきだった。好スタートから中団を確保すると、折り合いもぴたりとついた。「3回目の騎乗だったけど一番落ち着きがあった。それがいいのか、元気がないだけなのかは分からなかったけど」。皐月賞は438キロまで体を減らしたが、この日は前走から2キロ減の462キロ。秋3戦目でもダメージはなかった。ヴィクトワールピサとの2、3着争いを鼻差制しての2位入線。不利を受けてからもあきらめずに伸びたことが、繰り上がり優勝を引き寄せた。ジョッキーは「そうだよね。あの不利があっても伸びてくるのだからたいしたもの」と賛辞を贈った。
3月の落馬負傷で春シーズンを棒に振った武の復帰は8月。「秋はいいパートナーと組むのは難しいと思っていた」と素直な感情を吐露した。「それだけに、騎乗オファーに応えたい気持ちはあった」と意気に感じていた。「プレーしながらケガを治すのがアスリート」と準備を怠らなかったことが、幸運をたぐり寄せたのかもしれない。当初はセーブ気味だった乗り鞍も徐々に増やし、完全にリズムを取り戻した。
次走は暮れの有馬記念。「次は1位入線で1着になりたい」。1カ月を残して23年連続中央G1勝利を遂げた男は、きっぱりと締めた。やはりG1には、武豊の笑顔がよく似合う。

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