有馬記念回顧

tk33082010-12-27

中山最内は栄光への道。中山の神に愛され通ることを許されたのはこの馬、ヴィクトワールピサ
ローズキングダムが離脱したとはいえ、超がつくほどの豪華メンバーによるグランプリ。何が勝っても、理由が付けられそうな実力拮抗の組み合わせだったが、結果は人気2頭での決着。とはいえ、競馬としては見ごたえのあるレース。戦前の予想は難しかったが、逃げたのはトーセンジョーダンエイシンフラッシュも行きっぷり次第ではハナも持さない構えだったが、ゲートで後手。結局ハナ争いとはならずにトーセンジョーダンが無理なく隊列を引っ張る。そして、オウケンブルースリも先団の一角。横山典騎手に手が替わって何より積極策。折込済みとはいえ、面白い作戦。しかし、誰よりも場内を賑わせたのはペルーサ。なんとまともにスタートを決め、先団の一角を追走。調教が生きたか、ゲートを出た場合の想定通りの位置取り。この位置からあの脚を使えるのならば、ちょっと抗戦できないのでは…と思わせる先行策。基本的に他馬の作戦は、瞬発力勝負ではまずブエナビスタには勝てないとなれば、前々でリードを奪い、ブエナビスタより高い位置から脚を使って押し切るという作戦だろう。この時点でブエナビスタは中
団。位置取りは関係のないタイプでまず心配はないと思ったが、意を決して前に行った有力馬たちにとっては、望んだとおりの展開だったはず。ペースも絶好。推定で1000m通過が62秒と、このクラスでは破格に遅いラップ。結果的にもトーセンジョーダン掲示板に残り、1周目3、4番手にいたトゥザグローリーが3着と完全に前有利の流れとなっていった。
淡々とした流れで1周目のスタンド前を通過。レースは動きを見せず隊列も変わらず。だが向こう正面で一気にルーラーシップが外から上昇。このペースに我慢ができなくなったか。ルメール騎手のこの判断は馬の特性を勘案すればどうかという気もするが、ペースを活かすためには悪くない乗り方だろう。だが、これに反応したのがヴィクトワールピサデムーロ騎手。ルーラーシップに合わせるように外に出して一緒に上昇。一気にこの馬だけは先頭に並びかける。早仕掛けが得意なデムーロ騎手らしいのり方でもあるが、この判断は絶妙。というのは、ここで一気にペースが13秒5→12秒3→11秒5へとハロンを重ねる度に加速。もちろん、ここで動かずに先団で待機したまま、直線で後ろから来るだろうブエナビスタと瞬発力比べに臨む選択肢もあっただろうが、とにかくペースが遅かった。出来る限りブエナビスタとの差を広げたままで直線を迎えたかったのだろう。デムーロ騎手は自分でペースを動かした。この動きは一見無謀にも見えるが、実際はそうではない。勝ち時計を例年並みの2分30〜1秒台と想定するならば、このペースのままではそれよりもかなり下回る決着となりかねない。ヴィクトワールピサにとってはまだ余力がある状態での向こう正面の追走。多少ペースを上げたところでスタミナは持つはず。それならば、無理をしてでもブエナビスタとのリードを広げる必要があったのだ。ため過ぎてタメ殺しとなるよりも、動いて余分なスタミナと交換にブエナビスタとのリードを選んだデムーロ騎手の思い切りの良さは素晴らしい。
直線に入るとその思惑通り。先頭に立つとすぐにゴーサイン。押し切りを狙う。思った通りに抜け出して、そのまま押し切ると思われたが、外からブエナビスタの強烈な追い込み。ペース、位置取りに関係なく帳尻を合わせる、3歳春の暴力的とも思われる末脚を髣髴とさせる、セオリーも何もないという鬼脚を繰り出して外から並びかけたところがゴールだった。入線の瞬間は残ったと思ったが、写真判定の画像では微妙。場内はブエナビスタが交わしたのではないかという声もあったが…。結局押し切っていたのはヴィクトワールピサだった。
このハナ差は大きい。もう1回走れば勝てているかは分からないほどの僅差。だが、デムーロ騎手の細心かつ大胆な騎乗が最後のハナ差で栄冠をもたらした。春は一瞬の末脚で中山のインを切り裂いてきたが、凱旋門賞(仏G1)等遠征を経てモードチェンジ。硬軟自在のレースができるようになった。特に、前走ジャパンカップ(G1)はある意味では着を拾いに行くようなロスのない慎重な騎乗ではあったが、新しいこの馬の一面を見せた。その先行策がここで花開いた。ローズキングダムとの同世代勝負の行方は気になるが、中山はこの馬の自在性と瞬発力が一番引き出されるコース。素質馬多い世代の一角として古馬になってからの活躍が楽しみだ。
2年連続で2着の大本命ブエナビスタは向こう正面、ヴィクトワールピサが動いたところで、フリーハンドを得たいところだったが、メイショウベルーガに外からかぶされ前に馬を置く形で動けないまま。4コーナー前でようやく馬なりで上昇して行った。並みの馬なら、いや並みのA級馬であってもこのペースであの位置では絶望的と言えるポジションで、道中は馬券に絡むことさえ疑問に思ったが、最後はさすが。中山で上がりの競馬とはいえ、33秒台の末脚はなかなか出せない。一方、中山ゆえにスムーズに競馬ができなかったともいえる。道中の位置取り、距離に関係なくどこからでも同じ脚が使えるタイプ。負けても十分に力を知らしめるレースだった。欲を言えば、今回は先行策でも良かったのでないか…。
3着トゥザグローリーは結果論ではあるが人気が無さ過ぎ。ウィリアムズ騎手が前々でうまく立ち回って最後は勝ち馬に迫っていた。ダービーでも大負けしておらず、世代の有力馬の1頭。ローテは気になるところではあったが力は持っている。前回はデムーロ騎手がうまくインを付いた勝利。今回はやや外目でロスがあった。もっと柔らかい走りができれば、この距離でも。4着ペルーサはいいスタートで盛り上がらせたが…。逆に脚がためられずにズブズブとなってしまったか…。最後の直線では伸び切れなかった。むしろ、思い切ってタメるのが、この馬の能力を最大限に発揮させる作戦なのかもしれない。
6着ルーラーシップは道中まくったもののヴィクトワールピサが対抗すると行くのを控えてしまった。中途半端に脚を使った感じで…。7着エイシンフラッシュは出遅れて差す競馬。このペースではダービー馬とはいえ厳しい。ベストは、もう少し短い中距離で折り合いを気にせずに差し脚が生きるレースなのかもしれない。8着ネヴァブションは、中山巧者としては中途半端…。仕方が無いところもあるが、勝ちに行くぐらいの意気込みを見せてもよかった。こういうペースは合っている。もっと前にいればそれなりに粘れたはず。
11着オウケンブルースリは、先行策を採ったが…。現状ではタメて切れるパターンがいいのか…。もう少し厳しいペースで進んでいれば、スタミナを生かせたようにも思うが…。ペースが落ち着いてしまった。とはいえ、それで差せる脚が残っていたかは疑問だが…。連覇狙ったドリームジャーニーは13着。体重増と展開か。直線では伸びかけたようにも見えたが…。反応が以前よりも悪くなっている印象…。年齢的なこともあろうか。

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