純愛

「私は菊地直子」「うそだ」…同居の高橋寛人被告、葛藤
「私は指名手配されている。すごく大きな事件で。本当の名前は直子で、名字は菊地」
オウム真理教元信徒・菊地直子被告(40)を5年3カ月にわたって自宅にかくまったとして、犯人蔵匿などの罪に問われた内装業・高橋寛人被告(41)の初公判。東京地裁に証拠採用された供述調書などによると、菊地直子被告が正体を明かしたのは、2007年1月のこと。この日の被告人質問で、高橋寛人被告はそのときの心境を「うそだと思った」と語った。
前年11月に神奈川県の鎌倉にデートに行き、クリスマスには指輪をプレゼント。結婚を求めたが、断られた。その理由を問い詰めた末の答えだった。
一連のオウム真理教の事件への関わりを聞くと、「何をつくるか指示されないで薬を混ぜていた」などと説明したという。
菊地被告は07年3月、それまで川崎市で同居していた教団元信徒の高橋克也被告(54)=地下鉄サリン事件殺人罪などで起訴=から離れ、寛人被告のもとに引っ越した。1700万円の蓄えがあったが、うち700万円を持ち出した。
結婚を受け入れた菊地被告にウエディングドレスを着せて写真を撮り、新婚旅行として山口県高知県などを訪れた。菊地被告は、家で教団の儀式をするようなことはなく、信仰心は消えていたと感じたという。
出頭するか、2人で悩んだ。「一緒に死んでもいいよ」と持ちかけても、菊地被告は「何であなたが死ななきゃいけないの」。将来への不安は消えず、寛人被告は今年、兄に菊地被告だと明かした。そのことを伝えると、菊地被告は「あなたに苦労かけたよね、しょうがないよね」と、悲しそうに笑ったという。
菊地被告は6月に逮捕された。直後に出頭して逮捕された寛人被告は、勾留中に教団についての本を読んだ。「事件を詳しく知っていれば、同居することはなかったと思う」と語る一方、「また一緒に生活したい気持ちもある」と複雑な心境も語った。

http://www.asahi.com/national/update/1019/TKY201210190004.html