鬼畜の為す業

イスラム国、抑圧の街 喫煙者の指折る・洋装店の服焼く
過激派組織「イスラム国」が首都と呼ぶシリア北部のラッカ。米軍などの空爆が始まっても戦闘員は街を巡回し、支配する力はいまなお衰えていないようだ。極端なイスラム法の解釈により、人々を厳しく統制している様子を住民たちが証言した。
シリアの首都ダマスカスのバス発着所。12日にラッカから長距離バスで到着した国家公務員の男性(49)が、匿名を条件に取材に応じた。男性によると、ラッカでは「宗教警察」が巡回し、市民を監視しているという。
女性はニカブ(目だけを出すベール)の着用を義務づけられ、守らないと殴られる。夫や兄弟など身内の男性と一緒でないと外出できない。飲酒と喫煙は禁じられ、違反すると刑務所に入れられる。喫煙の場合、二度と吸えないように人さし指と中指を折られることもある。
男性は公開処刑を目撃した。切断された頭部は5日間、胴体とともに路上に放置された。アサド政権軍の兵士や政権に忠誠を誓っている人が処刑されるケースが多いという。
戦闘員の国籍はシリア、チュニジアアルジェリアサウジアラビアアフガニスタン、ロシア、中国など様々。子どもたちにお菓子を配ることもある。「良い行いをしているとの宣伝だ」と男性は話す。
米軍などは「イスラム国」壊滅をめざし、9月以降、空爆の範囲をシリアにも広げたが、誤爆も起きているようだ。男性によると11日、病院が空爆され、17人が死亡した。「戦闘員が病院を拠点にしていると考えたらしいが、病院にいたのは市民だけだった」
検問はあるが、ラッカへの出入りは可能だ。ただ男子大学生(22)は、ラッカ発のバスで別の街に向かう途中の検問で「つめが長い」と注意され、その場で切らされた。乗り合わせた乗客は「ヒゲの形がおかしい」と言われ、ラッカに送り返されたという。
避難先のエジプト・カイロで取材に応じた元教師の女性(48)は7月の断食月に約1カ月間ラッカに戻った。「自分が住んでいた国とは思えないほどすべて変わってしまった」。映画館や美容院は閉鎖され、洋装店の女性マネキンの服は燃やされた。
以前は男女共学だった学校は男女別となり、アラビア語と宗教以外の科目を教えることはほぼない。処刑を目撃したり空爆を経験したりしたため、発作を起こしたり大声で叫んだりする子どもが相次いでいるという。
ラッカ出身のジャーナリスト、カリーロ・ハムロさん(44)によると、「イスラム国」は電気、水道の施設を管理し、職員には月約50ドルの給与を払っているという。戦闘員の給与は月800〜1千ドル。携帯電話の回線は遮断されたが、公衆無線LANは機能しており、インターネットカフェも開いている。
特に問題なのが医療だ。もともと20の病院があったが、政権軍や米軍などの空爆で15の病院が破壊され、多くの医師がラッカを去ったという。
■「イスラム国」の主な規則
・飲酒、喫煙、音楽、映画の禁止
・戦闘員の撮影禁止
・女性はニカブ着用
・外出する女性に近親者の男性が同伴
・学校は男女別
・礼拝時はすべての店を閉める
・結婚披露宴、葬儀の禁止
(※市民の証言などから作成)

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