むかし豊山、いま旭天鵬

旭天鵬、幕内出場1445回 「十両に落ちたら引退」
旭天鵬は節目の土俵で、阿夢露(あむうる)の差し手を右で抱え、左はず押しで一気に運び出した。「勝ち星で新記録を作れて本当にうれしい」。関取最年長の40歳は、幕内出場1445回という数字をかみしめた。
まだまだ元気。だが、十両に落ちたら引退と決めている。「気持ちは変わるかもしれないけど」。賜杯(しはい)を抱いた男が十両では取れない――のではない。
十両は若者がしのぎを削る場所。落ちたオッチャンには務まらない」。だから、今も十両で頑張る同じ1992年春初土俵若の里を尊敬しているという。
西11枚目で初日から4連敗した先場所。実は「もうダメかも」と覚悟していた。巻き返して幕に残ったが、楽日にこう漏らした。「衰えが一気に来てる。もうそろそろだね」と。
常に周囲を気づかう。敢闘賞を受賞した昨年九州。大ベテランだけに支度部屋で遠慮する必要はないのに、取組後は表彰式までの時間を外の車でつぶした。負け越した力士もいたため、「ヘラヘラしてたらみんなに失礼だから」。
白鵬横綱土俵入りの露払いを務める。その直前の幕内土俵入りは、自分の化粧まわしではなく横綱の3本そろえで出るのが普通だが、時間に余裕があるときは締め直す。「俺にまわしを贈ってくれた人が楽しみにしてるから」。白鵬は「そんな天鵬関を尊敬しているんです」という。
帰り道。求められた握手やサイン、写真撮影に全て笑顔で応じ、ファンの声援と拍手に見送られた。(抜井規泰)

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