かなしいなあ

「守れなくて、ごめん」 消息絶ち遺体で見つかった母へ
昨年暮れ、新潟県北部の町に暮らす男性は、姉から連絡を受けた。母は69歳。10キロほど離れた隣町の実家に駆けつけた。
4日分の新聞がたまり、普段は整理されている部屋に、食べかけの菓子パンとスナック菓子、スリッパが散乱していた。
警察に届けを出し、仕事の合間に捜し回った。近所の人から、自分が知らない母の様子を聞いた。「夜中に家の電気がついていた」「深夜にゴミを出していた」。昼夜が逆転していた。
予兆は、あった。
12年前に父が他界し、母は一人暮らしになった。昔からきちょうめんな性格。毎月、隣町から顔を見に行くと、部屋はきれいに整理され、「ぼけてる暇はない」と口癖のように言った。「孫の学費も援助したいし」
変わり始めたのは、3年ほど前だ。かわいがっていた愛犬が死んだ。「おはよう」「おやすみ」。毎日声をかけていた相手がいなくなった。会話が減った。
2年前の夏、男性の自宅近くで、母が警察に保護された。自転車に乗って迷っていた。「公園に行こうと思って道に迷った。悪かったね」。母は言った。
秋、実家でコーヒーを飲んでいた時、ぽつりと打ち明けられた。「実は詐欺にあって、お金を取られた」。申し訳なさそうな母。問い詰めることはできなかった。こっそり通帳を見ると、見知らぬ名義の口座に500万円が振り込まれていた。
病院での診断結果は「初期のアルツハイマー」だった。自転車で転倒したり、得意の茶わん蒸しに、鶏肉でなく豆腐が入ったり。それでも、男性が顔を見に行ったときは、家の掃除は行き届いていたし、口癖も変わらなかった。
そばにいたいが、休日出勤も多い。介護施設を探し始めた矢先、母は姿を消した。
警察から電話があったのは、4カ月後。
雪解けの川岸で発見された母は、すでに白骨化していた。自宅から約10キロ離れ、普段の散歩コースとは反対の方向。歩いて来たのか、それとも川に落ちて流されたのか。母の最期は分からないままだ。「守れなくて、ごめん」
身につけていたズボンのポケットには、20年前、男性が贈ったバーバパパのキーホルダーが入っていた。

http://digital.asahi.com/articles/ASK6J41DQK6JUOHB004.html?_requesturl=articles%2FASK6J41DQK6JUOHB004.html&rm=224

こんな話しはそこら中にころがっているんだろうけど、やっぱりかなしいなあ。