勝った本人がいちばん驚いてる

断然の最下位人気。1000万クラスでも連対実績のないトーホウシャインの重賞V。「本当に驚いた。確かに道悪はうまいが…。競馬はやってみないと分からないものだねえ」と管理する崎山師ですら半ばあきれた表情を浮かべた。道中は後ろから3番手のポジション。ラチがあってもお構いなしに右へ右へ行こうとする悪癖がある。「2、3番手に行くつもりが、ついて行けなくて。後方のイン、ラチ沿いを進みました」と振り返った高野容。この言葉はそうせざるを得なかった、という意味だ。もう少し器用さがあれば、先行できたかもしれない。馬群をさばこうという欲も出ただろう。だが、狭いラチ沿いを進むしかなかったのだ。それが4コーナーで幸運が舞い込む。前を走っていたブリトマルティスが外のベッラレイアに体を寄せて馬群全体が外に振られ、内がぽっかり空く。「空いた!と思って追いましたが、まさかあんなにいい脚を使うとは。あっと思った時は前にあと1頭だけ。これ重賞だよなと夢中になって…」。レース直前の豪雨が、有力馬の末脚を鈍らせたのも味方した。全くノメらずに走っていた道悪巧者はコースロスなくラチ沿いから抜け出すと、逃げていたピースオブラヴをきっちり捕らえた。高野容にとってこれが今年の初勝利。昨年は障害で1勝のみで06年は未勝利。05年以来、3年ぶりにつかんだ平地勝利が初の重賞Vとなった。「火曜に48キロで乗れますと伝えたのは良かったんですけど、この重量で乗るのは4年ぶり。土曜には馬場を走ったりで減量して、3・8キロ落としました」。誰が減量に励む姿に注目したことだろう。だが、勝利の女神はこの努力を見逃さなかった。
ここ数年、騎乗機会に恵まれず勝ち星は伸びていないが、まだ24歳。この先、いくらでも飛躍のチャンスはある。派手な重賞Vでその名を売った高野容。この夏、楽しみな若手騎手の1人となった。

http://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2008/06/23/01.html

がんばれ、がんばれ。次はJG1。