神戸新聞杯回顧2稿

復権。春の王者をまとめて負かした2歳王者。秋の覇権争い。まずはローズキングダムが成長を見せて価値ある先勝。
ローズキングダムは、新馬戦以来のライバル、ヴィクトワールピサの主戦、武豊を迎え、もう一度、チャンピオンとして王道を進むための重要な一戦。対してエイシンフラッシュは、二冠を目指してダービー馬として勝利が求められるレース。共に結果と同時に内容が求められるレースだった。
戦前から予想はされていたものの、ペースは見るからに落ち着いて1000m通過63秒1の超スローペース。たださえ、上がりの脚比べとなりがちなこのレースだが、ますます上がりの競馬に。ダービーで極限に近い32秒台の上がりを繰り出した2頭の争いとなるだろうことはこの時点で予測された。ただ、今回は例年以上の切れ味比べとなったという点を強調しておきたい。特に通常であれば残り600m、すなわち長い外回りの直線に入ったところで、ペースアップ。各馬ギアチェンジで叩き合いが始まる…というのがパターンだったのだが、今年はペースが上がるポイントが最後の最後までずれこんだ。もちろん、残り600m、あるいはその前の段階からペースは徐々に数字上では上がっていると確認できるが、これは前半があまりにもスローだったことの反動でもあり、明確な、レース展開における勝負どころの到来を示すほどの極端な数字の変化ではない。注目したいのは、残り400〜200mの区間。ここで、このレースでは初めて後半に10秒台を計測した。実はここに至るまでの時計が、2分3秒7。これは、今までの年の中で圧倒的に遅いタイムとなっている。つまり、今年は最後の3ハロンではなく、最後の2ハロンまで本格的なペースアップは到来せず、残り400mという極端に短い区間での瞬発力勝負となったといえよう。
こうなると、前述のように上がりの競馬となったダービーで求められた能力がこのレースでも求められることとなり、ダービー上位馬にますます有利となる展開となった。では、この2頭の優劣をつけたのは何だったか。1つは折り合いだろう。道中は馬群の最内で淡々と走るローズキングダムの外にエイシンフラッシュがつける位置関係。しかし、あまりのスローでエイシンフラッシュは掛かり気味。これで体力を多少消耗したのは確か。しかし、それ以上に大きく明暗を分けたのは、枠順の差だろう。ローズキングダムは終始内側を通れたのに対し、エイシンフラッシュはその1頭分外を周回。直線でも内側を抜けたローズキングダム。やや外目、馬場の中ほどを追い込んだローズキングダム。上がりの時計は全く同一で、この僅かなコースロスの差が2400m先のアタマ差となってしまった。
勝ったローズキングダムは何より馬体が増えていたのが評価できる。春はひ弱な印象で、バランスはいいがボリュームに欠けた。2歳時とあまり変わらない印象で、ともするとこの馬の成長力の限界点を示していたようにも思えたが、夏を越えて一変。22キロ増は成長分だろう。最後の一冠。再び有力馬として迎えられそうだ。折り合い、切れ味…ステイヤーとして必要な要素を兼ね備えている。ダービーはスタミナ不要だったという評価もあるが、この馬は紛れもなく万能型。菊花賞(G1)に近づいた。
2着エイシンフラッシュは、これで菊花賞における人気は逆転されそうだが、勝ち馬とそう差はないだろう。久々という点の影響は大きい。また、何より走ったコースの差が勝敗を分けた。折り合いの不安もあるだろうが、今年はヤマニンエルブが飛ばしそうで、例年よりは流れるペースが予想される。スムーズに走ってまた上がり勝負となればチャンスは十分だ。ダービー時点でもこの馬の長所が不明確だったが、毎度色々な新しい面を見せる馬。ローズキングダムは限られた区間での瞬発力勝負で再台頭して来たが、この馬が意外にも「長くいい脚」が使える馬だったら…。まだ底を見せていないという点で評価を下げる必要はない。
3着ビッグウィークは、穴人気となっていたが力の差は歴然。逃げ馬の後ろで終始待機して直線でインを抜けようとしたが、一瞬で2頭に前を奪われそのまま引き離される一方…。実力の差を見せ付けられたレース。展開の利もあっただけに、評価は難しい…。4着タニノエポレットは、33秒台の脚。ただ、ジワジワと伸びただけで…。良く伸びてはいるが。5着レーヴドリアンは、こういう差し比べで面白いと思ったのだが…。いつもよりスムーズに馬群に取り付いて期待されたが、直線では焦って大外へ。瞬発力だけなら、上位馬と互角の勝負ができる馬だが、道中力んでいた影響もあって伸びを欠いてしまった。叩かれての上積みを考えれば次も一応見限れないが…。

http://archive.mag2.com/0000150903/index.html

キングダム雪辱の菊王手!
菊花賞TR「第58回神戸新聞杯」(3着まで優先出走権)はダービー1、2着馬の壮絶な一騎打ち。ダービー2着の2番人気ローズキングダムが雪辱を果たした。ダービー馬エイシンフラッシュをダービーと同じ首差でねじ伏せ、ラスト1冠の菊花賞に弾みをつけた。
ローズキングダムが2度スタンドを沸かせた。まずは馬体重の発表時。前走・ダービーからプラス22キロにファンはどよめいた。そしてレースだ。直線はダービー1、2着馬による見応えのある叩き合い。首差の勝利を「スローになるのは分かっていたけど、あそこまでとは思っていなかった。それでも上手に対応してくれたしよくしのいでくれた。乗り味がいいし、癖もない。素晴らしい馬」と武豊は絶賛した。
道中は遅い流れを中団で外エイシンフラッシュと並ぶ形で我慢した。「やはり気になった」と鞍上の意識もライバルへと向いていた。直線入り口では内へ。ビッグウィークが伸びたスペースを突いて、絶妙の抜け出しを見せた。外から馬群を割ったダービー馬が迫ったが振り切った。首差はダービーと同じ。名勝負を天才はこう分析した。
「枠が逆なら逆のポジションになっていたと思う。今までの対戦もうまく乗った方が勝っている感じ。きょうはこっちの方がうまくいったしツキもあった」
橋口師にはまず馬体重の質問が飛んだ。中間は「成長が案外」と明言していただけに、意外な大幅増を照れ笑いを浮かべつつ語った。「数字だけ見たらびっくりしたよ。今はいい方に受け取っている。見た目に太めがないわけだから」
原因として挙げたのが長距離輸送の有無。関西圏での出走はデビュー戦だけ。以降は関東圏、前日輸送での競馬だった。「長距離輸送で減るんだね。向こうでだいぶ食いが落ちるみたいだから」。菊花賞(10月24日、京都)は今回と同じ当日輸送。この結果なら好条件と言える。
武豊は「春のクラシックは(ケガで)乗れなかったんでね。いい馬に乗せてもらえるので、それに応えて頑張りたい」。来週は凱旋門賞(10月3日)でヴィクトワールピサ騎乗のため渡仏。「悔いのないようにいいレースをしたい」と気合を入れた。さすがは第一人者。秋の到来とともに存在感がさらに増す。まずは自身の菊花賞5勝目へ向け最良のパートナーを得た。

http://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2010/09/27/03.html

菊花賞でもこの2頭が軸になることは間違いないでしょうが、枠順に注目しましょう。