ほんわかとしたええ話し

「芝刈り電車」快走中 深夜の鹿児島、一時引退の2車両
路面電車の軌道に芝生を敷いている鹿児島市電で、世界初を名乗る「芝刈り電車」が快走中だ。約半世紀働いて引退した車両に、新たな活躍の場が与えられた。桜島の降灰に見舞われる街に潤いをもたらす芝生の景観は、2両の「老朽電車」が支えている。
10日午前0時半すぎ、同市中心部の加治屋町付近。ライトをつけた電車が時速5キロほどで走っていた。行き先表示板には「芝刈作業中」の文字が光る。
これが芝刈り電車。黄色い箱のような芝刈り機を台車に積んだ車両を、別の1両が引いている。近づくと、青くさいにおいがした。
芝刈り機には、らせん状の刃が4本あり、この刃が回転しながら芝を刈る。刈った芝はホースで収納箱に吸い込む。「大きな掃除機をイメージしてください」と市電車事業課の国永政博車両係長(55)。電車が通り過ぎた後の芝生は、高さ3センチ程度に刈りそろえられていた。
芝刈り電車は5月27日にデビューした。客を乗せて50年以上走った512号と513号を改造した。どちらも2008年度末で廃車になるはずだったが、「何かに使えないか」という職員の発案で改造することになった。
芝刈り機を載せているのが元513号の台車。芝刈り機は鉄道車両やバスなどを製造・改造する大阪車輛工業(大阪市)が造った。
それを引く電車は512号の車体をほぼそのまま利用した。ふだんは「散水電車」として活躍している。車内にステンレス製の水タンクを備え、前方のノズルから芝生などに散水する。軌道に降った桜島の灰を除去できるジェットノズルもついている。
これまで散水や芝刈りは業者に委託し、人力で行っていた。市公園緑化課の前村格治課長は「作業効率がはるかに違う」と話す。
「人間で言えば再雇用ですね」と、2両と一緒に長い年月を歩んできた国永係長。「今はお客さんを乗せていたときと働き方は違うけど、しっかり働いてくれているし、ガタもきていない」
芝刈りは芝の生育を見ながら、夏場に4回、秋以降に3回程度行う。作業は職員4人が担当。終電後から始発までの数時間の勝負だ。軌道の芝生化が終わった区間(総延長5キロ)を一通り刈るのに3日ほどかかる。当初は始発直前まで作業が終わらず慌てたが、今は慣れてきたという。
芝刈り電車の次の出番は10月。2両はメンテナンスを受け、出発の合図を待つ。<鹿児島市電の軌道敷緑化> ヒートアイランド現象の緩和や騒音低減、美しい都市景観づくりを目的に、2006年度から全国で初めて路面電車の軌道に芝生を敷いた。交差点などを除く総延長約8.9キロの軌道が対象で、12年度末に整備を終える見込み。鹿児島市以外の全国5カ所でも試験的に導入されているが距離が短く、本格導入しているのは鹿児島市電だけだ。

http://www.asahi.com/national/update/0925/SEB201009250008.html