牧さんのコラム

アメリカによる指揮権発動である
中国漁船の船長釈放。週末、様々な観点で、その賛否が議論されているが、やはり唐突過ぎる。
仙谷官房長官は9月24日午後の記者会見で「法務省から刑事事件として、そういう判断に到達したと報告を受けたので、それは了としている」と述べたが・・誰も信じないだろう。
これは、日中関係に悪化の兆候が明確化し、戦略的互恵関係を維持させる意味で、民主党政権が指揮権発動に踏み切った!と見て良いだろう。(法務大臣は,検察庁法に基づいて検察事務について検察官を指揮監督する権限をもつが、この指揮権は、個々の事件の取調べまたは処分については、検事総長に対してのみ発動される。これが「指揮権発動」である)
指揮権は、1954年4月21日、吉田内閣の法務大臣犬養健が造船疑獄事件で、当時の自由党幹事長佐藤栄作の逮捕を通常国会の会期終了まで延期せしめた例がある。が、それ以来、指揮権が発動された例はない。
しかし「あ・うん」の隠れた指揮権発動は常に存在している。
例えば、千葉景子・前法相は1月19日の閣議後の記者会見で、民主党小沢一郎幹事長の資金管理団体の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件について「一般的に指揮権が私のもとにあることは承知している。個別に行使する、しないはコメントすべきではない」と述べている。
この法務大臣の言葉を、検察当局はどう受け取ったのだろうか?
彼らは、千葉さんが小沢さんと極めて近い存在であることを熟視している。小沢サンは不起訴になった。
今回はあからさまな「隠れた指揮権発動」である。
では、何故、突然の釈放になったのか?
これはアメリカの意向が大きいと思う。
アメリカは尖閣諸島が「日米安保の範囲内」であることをクリントン国務長官が明言した上で「日中関係の悪化に懸念」を示した。アメリカに取って、この事件は面倒くさい出来事なのだ。
日本の主張は正しい。それを認めるから、鉾を収めろ!というサインである。
民主党は水面下の外交が不得意だ。そこで時間を置かず「アメリカの意向」に飛び乗った。
僕は事実上、今回は「アメリカの指揮権発動」ではないか?と分析する。(この指揮権発動が正しかったのか? 日本の広い意味の国益になるのか? これを判断するのは非常に難しい)

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アメリカは普天間のことで日本に腹を立てており、日米関係はギクシャクしている。そこで中国が「今や!」と言わんばかりに強硬姿勢に出てきた。どこを着地点にするかが問題ですが、いっそハーグに持ち込んでスッキリ決着付けるべきだと私は思います。