コンピュータ将棋vs女流王将

いよいよです!
みなさん、おはようございます。
いやー、いよいよ本日、清水市代女流王将と4つのコンピュータ将棋ソフトによる「あから2010」との対局が行われます。
私は家が遠いので、もう中央線のなか。会場に向かっている途中ですが、気持ちはどんどん高ぶっています。本当にわくわくしています。
取材をした身としては清水さん(本当に素晴らしい方です!)を心から応援したいと思うと同時に、あまり寝ていないのか、目を腫らして最後の調整に取り組んでいる開発者の方たちの姿も見ているだけに、あから頑張れ!とも思ってしまいます。
もちろん勝敗に興味はありますが、今日はそれ以上のものを見ることができるのではないでしょうか。
激指の開発者の一人、鶴岡さんが言っていたように、1秒間に30億回も計算するコンピュータとたった一人で対峙する人間のすごさ、そして小さな盤面上のほぼ無限の局面が広がってゆく将棋というゲームの奥深さを、今日の対局を見た人みんなが感じられるのではないか、と思っています。

http://blog.livedoor.jp/aishougi/

大盤解説会場にいます
大盤解説会場にいます。
会場は立ち見も含めて大入り満員。移動もままならないほどの混みようです。外から見ている人もいます。500席あるそうですから、それを大幅に越える人が見に来ています。
「タイトル戦の時でも200か250ぐらいしか入らないのに・・・」との声も聞かれ、この対局がいかに注目を集めているかが伺われます。
対戦を前に、
米長将棋連盟会長、
白鳥情報処理学会会長、
場所を提供している東京大学情報理工学系研究科長が挨拶に立ちました。
米長会長からは「東大には木がたくさん生えていますが、その木はイチヨウ。市代が勝つ」と会場を沸かせていました。
また、萩谷研究科長から「今日は機械が機械として人間に認められ試合をする画期的な日」との挨拶がありました。
大盤解説会場では、佐藤康光さん、藤井猛さん、里見香奈さんの3人が解説をしていますが、実況・解説がおもしろく、のっけから、会場は大盛り上がりでした。
開始早々、4手目(後手あからの2手目)であからが3三角と意表を突く?手で、会場を沸かせました。
佐藤さんからは、「前例のない将棋で構想力と読みの力が問われるいい将棋。コンピュータの実力をみるのにもいい戦形だ」とのコメント。
佐藤九段、このブログを事前に読んでくれていて、びっくり!!
うれしい!!
会場でお会いした近山隆東京大学工学系研究科・副研究科長(激指の横山さんと鶴岡さんの師匠)からも、「昨日アップの伊藤さんのインタビュー原稿読んだよ」と言われて、光栄でした。うふふ。
はじめ、あからは、比較的手を決めるのが早く、数秒で次の手を指していました。激指、Bonanza、YSS、GPSのどの手で決まっているのかも、知りたいなあと思いながら見ています。
現在、開始から1時間、あから2010も清水さんも、じっくり考えて指しており、動きが遅くなってきました。
さて、解説も一旦休憩に入りました。

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人間には指せない手を・・・
最初にお断りしておきますが、私は、将棋に関しては、小学生の時にちょっと遊んだぐらいの素人です。
今、会場では、休憩を挟んで(清水さんとあからは、休憩を取っていませんが)大盤解説が始まりました。
32手目、後手あからが持ち駒の角を4四角と指して、清水さんは大分長く考えています。
角を指した瞬間、会場からは、エーッと声が上がりました。
佐藤さんからも、あからに対して「初めてクエスチョンな手が出た」とコメントがありました。
しかし、その後先を検討してみると、
「人間的には?だけど、よく研究してみると隙がないなあ」(藤井さん)
清水さんもじっくり考えています。
先手清水さん4六歩と指しました。
「常識的な手だ」とのコメント。
4四角に対して、藤井さんは「人間があせるのが心配」
佐藤さんは「人間が生理的に指せない手を指せるのがコンピュータのスゴいところ。最初悪い手だと言ったけど、悪い手じゃなかった」と
清水さんを気遣っています。
次の一手が勝敗を分けるかも」(藤井さん)と言ってからの、清水さんの1手は、無難だったようです。
コンピュータは、時々、独特の指し方をするようで、そんなとき、清水さんは、よく考えて次の手を指しています。
あーーっ。
会場からどっと声があがりました。
あからが、また、誰も想像しない手を指しました。
今度も「先手清水さん完全有利になった」とコメントされていますが、
これもまた、考えてみたら、なんか良い手なのかも知れません。
みな驚いています。

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大盤解説は、また、いったん休憩となりましたが、特別企画として、
日本将棋連盟の理事中川七段と女流棋士四名による解説が始まりました。
中川さんが会場に、「どっちが勝ちそうか」たずねたところ、清水さん有利が三分の一強、あから有利が三分の一弱、五分五分がぱらぱらと、手が挙がりました。
今日の会場には、普段はあまり対局を観戦に来ないような若い男性がたくさん来ています。コンピュータとの対局に関心があったのでしょう。あから有利で手を挙げられたのは、そういった男性たちのように見えました。観戦者は650人を超えています。会場である東大の学生は、10人も手が挙がらず、少ないようです。
あからは、時々、えっという手を指しますが、これがよく考えると対応に苦慮する手で、清水さんは、10分、20分と考えています。
今の段階で「清水さんが、2四歩を指せれば、大げさかもしれないけど必勝だろう」と中川さん。
あからいい勝負をしています。
ツイッターで私のツイートをRTしてくれた方のコメント
「歴史的一戦は名勝負?」
ほんとに、そうですね。
田中徹さんが隣で、一心にメモを取りながら対局を見つめています。対局の流れは、後日、できるだけ早く電子書籍版でアップいたします。
対局はまだまだ続きます。

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投了。清水さん、おつかれさまでした
すでにtwitterなどでご存知だと思いますが、清水市代女流王将と「あから2010」の対局は、あからが86手目に「9五桂」と指して清水さんが投了、「あから」の勝利となりました。
モニターに清水さんが下げた頭が映った時、大盤会場から落胆の声が漏れました。
途中、会場で解説者の佐藤康光九段が、清水さんと「あから」どちらを応援しているか挙手を求めたたところ、清水さんが7−3で多かったですね。
終了後の会見で清水さんは、こんなことを言っていました。「コンピュータの弱点を突く作戦か、清水市代らしい手を指していくべきか、悩みました。盤の前に座っても迷いはありました。しかし今回、プロジェクトの一員として指名をいただいたことがすごくうれしかった。そうであれば、清水市代らしい指し方が一番だと思いました」
これは、われわれの取材でも話してくれていたことで、とても共感しました。
また、清水さんは、コンピュータ対策も十分にされていたということで「あから」にそれほど驚くような手はなかったとおっしゃっていました。それでも「あから」の66手目「5七角」について「あそこだけは、唯一驚いた」そうです。
日本将棋連盟米長邦雄会長は、清水さんの敗因を「ペース配分を間違ったこと。人間らしかった。これに尽きる」と評しました。
清水さんは61手目で、持ち時間の3時間を使い切っていました。
気になる次の対局、渡辺明竜王羽生善治永世六冠の名前が一部であがっているようですが、会見では、米長会長「彼女(清水市代)のリベンジがフェアだと思う」、清水さん「いまは熱くなっている。機会があれば、研鑽を積んで。でも時間があれば・・・」ということです。

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