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新学期用教科書50万冊被災 各社、追加印刷急ピッチ
岩手、宮城など東日本大震災で被災した計6県で、新学期に配る予定だった小中高校と特別支援学校の教科書計50万4千冊が、津波で水につかるなどして使えなくなったことがわかった。全国教科書供給協会(東京)がまとめた。教科書各社は追加印刷を始めている。ただ、用紙やインキの調達にめどはつきつつあるが、配送の不安があり、新学期への見通しは不透明だ。
教科書会社でつくる教科書協会(東京)によると、新学期用の教科書は震災発生時、各地域の取り次ぎ書店に保管されていた。しかし、書店自体が倒壊したり、津波で流されたりして被災。建物が大きな被害を免れても、棚から落ちて折れ曲がり、だめになった本も少なくないという。
文部科学省によると、福島、宮城、岩手3県では必要冊数は590万冊。その8%余りが被災した計算になる。
当初は、追加印刷ができるかどうか危ぶまれる教科書会社もあった。多くの社に用紙を供給している宮城県石巻市日本製紙の工場が津波で大きな被害を受けたり、千葉県市原市にある大手インキ原料工場がコンビナート火災の影響で稼働できなくなったりしたためだ。
しかしその後、各社は関東各地の紙販売代理店にあって無事だった用紙をかき集めたり、追加分のインキを在庫で賄ったりして、態勢を整えつつあるという。
最大手の東京書籍は計21万9千冊が被災した。取引先の関東の紙販売代理店に問い合わせた結果、用紙は在庫で賄える見通しが立ち、すでに一部の印刷を始めているという。
音楽教科書大手の教育芸術社も計約7万冊が被災した。同様に用紙とインキは取り寄せや在庫で確保できる見通しが立ち、4月中旬には追加分を発送予定だ。国語大手の光村図書出版も、被災地向けに追加印刷する4万3千冊の一部をすでに刷りはじめたという。
課題は、いかに子どもたちの手元まで届けるかだ。
教科書協会によると、各学校への納品を担う取り次ぎ書店が被災して機能しなくなっているケースが多い。また、埼玉県加須市への集団移転を決めた福島県双葉町などのように自治体ごと移転した場合には、配送先を確認しなければならない。個人で避難した人も各地に多い。そのため、それぞれの転入先で何冊必要なのかは「とても予測がつかない」と担当者は話す。
それでも何とか新学期までの完全供給を目指したい、と教科書各社は意気込む。東京書籍の幹部はこう話す。「新しい教科書は被災地の子どもたちの希望になると信じている。会社の使命と思って何とか届けたい」

http://www.asahi.com/national/update/0329/TKY201103290502.html