心情的にいちばん応援しやすいかな

ヴィクト頑張れ!被災地が期待/有馬記念
東日本大震災で被災した宮城県亘理郡にある社台ファーム山元トレセンは、津波による被害で人馬とも避難を余儀なくされた。あれから9カ月半。困難を乗り越えて迎える有馬記念(G1、芝2500メートル、25日=中山)。袴田二三男マネジャー(51)は「僕たちの馬が走ることでみんなが少しでも元気になれば」と、同トレセンからドバイで世界制覇を果たし、史上5頭目の連覇に挑むヴィクトワールピサ(牡4、角居)などにエールを送った。
人々の脳裏に色濃く刻まれることとなった3月11日14時46分。東日本を突如、大きな揺れが襲った。かつてダイワメジャーゼンノロブロイなどの名馬が羽を伸ばした宮城県亘理郡山元町にある社台ファーム山元トレーニングセンターも例外ではなかった。
外出先から車を飛ばしてトレセンに戻った袴田マネージャーは、目の前の光景に言葉を失った。「よもやここまで大きな津波が来ているとは思わなかった」と振り返る。海岸線から2キロ未満にあるトレセンは、坂路コースのすぐ下まで民家が押し流されていた。厩舎付近は地割れを起こし、柵もなぎ倒された。約150頭いた競走馬は奇跡的に何事もなく済んだものの、被害は甚大なものだった。
風呂にも入れなかった。電話もほとんどつながらない。停電で暖もとれず、ろくに食事もできなかったという。でも、スタッフは誰ひとりとして下を向かなかった。袴田マネジャーは静かに、それでいて強い意思を込めて言う。「だって僕らは馬で仕事しているから」。全員が馬のために必死に動いた。調教は休まざるを得なかったが、幸い飼料や発電機を確保できたこともあり、サラブレッドに大きな影響を与えることはなかった。受け入れ先の決まった馬から順次避難を開始し、5月下旬に再開するまで人馬は各地で調整を続けた。
震災から9カ月半−。海岸付近では今でもがれきの除去作業が進められている。山元トレセンにいた馬の活躍が地元住民を元気付けているのも事実だ。「地元の人もここにいた馬が走るのを楽しみにしてくれる。無事に走っていることにホッとしてくれてるんじゃないかな」と思いを語った。
ヴィクトワールピサは震災直後の3月26日、ドバイWCを勝って世界の頂点を極めた。この快挙は悲しみに暮れる多くの人に勇気を与えた。今年は史上5頭目有馬記念連覇をかけて出走する。山元トレセンに滞在した期間も長く、袴田マネジャーのヴィクトに対する思いも大きい。「心情的にはドバイも勝ったし今回も、という気持ちはある。休みの度にこっちに来て調整していたし、スタッフたちとも触れ合う機会も多かったからね。今年も強い馬がそろうけど頑張ってほしい」とエールを送る。
ヴィクトだけじゃない。今年は過去最多タイとなるG1馬10頭が名を連ねる。ブエナビスタオルフェーヴルをはじめ、ファンに選ばれた15頭がターフで躍動する姿は被災地にも希望や活力をもたらすに違いない。信じよう、人馬の絆を、競馬の力を。

http://www.nikkansports.com/race/news/p-rc-tp0-20111220-878705.html

心情的に応援したくなるのはヴィクトワールピサと、レッドデイヴィス